S-AIR Award: 風間天心さんカンボジア滞在記⑥

いよいよ最終回!S-AIR Award(レジデンス派遣プログラム)で、Sa Sa Art Projectsとの連携によりカンボジア・プノンペンに2018年1〜2月に滞在していた風間天心さんから、滞在記第六弾が届きましたのでご紹介します。

第一弾第二弾第三弾第四弾第五弾も併せてどうぞ。


2/17(土) 【カンボジア滞在31日目】

ミャンマーの旧首都ヤンゴンへ来ました。(今の首都はネピドー)

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同郷の友人が今年からヤンゴンで働き始めたので、職場を見せてもらいます。日本では札幌のトヨタディーラーで働いていますが、ミャンマーではこの「HTS」という会社で働くようです。「日本の会社」と「現地の会社」の共同経営らしい。

ヤンゴン市内はバイク走行が禁止されているため、移動手段は完全に「車」。しかもこの「HTS」では、ハイブリッド車の整備を専門にしています。

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ちなみにこのお客さんが履いているのは「ロンジー」というミャンマーの伝統衣装。特別な衣装というわけではなく、日本の着物以上に履いている人をよく見かけます。僕には「女性のスカート」というイメージが染み付いていて、何度みても違和感…。

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昼食は、なんだか立派そうなレストラン「ハウスオブメモリーズ」へ。ここはアウンサンスーチーさんの父、アウンサン将軍の事務所跡です。いくつかある小部屋には、事務机やタイプライターなどが置かれています。

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気がついたらエビ料理ばかり。ここはタイ料理寄りの味付けが多く、どれも美味しかったです。次の日は少数民族シャン族の料理を食べに行ったのですが、見た目は同じように見える料理でもいろんな香辛料を使っているためか、多種多様な味が楽しめました。

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首都ヤンゴンの真ん中に光り輝く「シュエダゴン・パヤー」へ。この黄金に輝く塔。遠く離れた場所からでも見つけられるのですが、近くで見ると更に巨大な印象。

寺院内部もこの塔を中心にぐるっと一周できるようになっていて、沢山の塔や仏像に囲まれています。塔の周囲には各曜日の神様が配置されており、自分の曜日の神様に水をかけると良いらしい。友人が水をかけている姿をひたすらパシャパシャ。

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入り口には2体の獅子。日本でいえば狛犬、シーサー。インド文明やエジプト文明にも見られるユーラシア大陸全般で見られるヤツですね。ちなみに寺院の中は土足禁止になっていて裸足で歩くのですが、もちろん超熱い。

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天井にはためく「仏旗(ぶっき)」正式には「青、黄、赤、白、橙」なのですが、ここにあるものは「橙」の部分が「ピンク」でした。ちなみにこの正式配色は1950年に国際統一されたのですが、日本では「紫、黄、赤、白、緑」を今でも使用しています。

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たまに見かけるキッズお坊さんの集団。ここでは保母さんのような女性たちに引率されながら集合写真を撮っていました。他にも集団でお経を唱える人々がいたり、この場所が厚い信仰の対象であることがうかがえます。

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先ほどのお寺よりも観光色が強い「チャウッターヂー・パヤー」。ここの名物は何と言っても巨大な寝仏。デカすぎて、建物がドーム球場みたいです。ミャンマーの古都「バゴー」にある寝仏と同等の大きさ、70m。

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ここに訪れる人たちは、巨大な寝仏を見たら一目散に帰ってしまっていますが、一応お寺なのでね、他にも見られる所はないかと探していたら奥にも広大な空間が広がっていました。

しかし誰も見当たらない。唯一見つけたのが、一人懸命にサッカーをする小さなお坊さん。

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日も暮れてきたので最後のお寺「スーレー・パヤー」。「スーレー」とはパーリ語で「聖髪」という意味らしく、中央の仏塔内にはブッダの遺髪が収められているらしいです。訪れた時間が夕方だったせいもあり、夕日を浴びて、とても美しく輝いていました。

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このお寺を中心にヤンゴン市街地が構成されており、お寺の周辺も多種多様なお店が囲んでいます。ミャンマーのお寺で売られているものはどれもカラフルな民芸ばかりで、朗らかな信仰心を感じます。

2/18(日) 【カンボジア滞在32日目】

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友人の部屋から見た風景。窓には「24」の番号。意味はよくわからないが、どうやら建設時に書いた番号が消されずに残っているらしい。ミャンマーではシールなどを剥がさない習慣があるらしく、特に日本製品に貼られたままのキャラクターシールや落書きなども、むしろ「日本クオリティー」の証明になるらしい。

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マンションを出たら、こんな感じの家々を通り過ぎて道路に出ます。家が木造のせいなのか、カンボジアよりも質素な生活をしている印象を受けます。そしてあらゆる場所で見かけるプラスチック製の椅子。「東南アジアといえば」と思えるぐらい、このカラフルな椅子が印象に残ります。

この日のメインは「国立博物館」。ゆっくり見れば数時間かかってしまうほど充実した内容でした。正直カンボジアは、周辺国と比べて博物館の充実具合が劣ってしまいます。きっとそれも、内戦の影響が色濃く残っているせいでしょう。発展した文化自体は他に劣らないものだったはずなのに…残念です。

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日本人の墓地へ。第二次世界大戦の戦没者が埋葬されている墓地。1999年の落成と、整備されたのは意外と新しい。ここからほど近い飛行場へタクシーで向かったのですが、その途中に通った裏道がなかなかなスラム街でした。きっと普通の観光客は入り込まないような地域。友人も「ヤンゴン市内にこんな場所があるんだな」と驚いていました。たまたまでしたが、カンボジアへ戻る前にミャンマーの現実を見たような気がしました。

2/19(月) 【カンボジア滞在33日目】

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カンボジアに戻りゆっくり休みたいところですが…二日後に控える「オープンスタジオ」に向け、スタジオにこもって作品制作をします。滞在中に撮り溜めた写真を一枚紹介。道端で売っている黄色い液体。さて何でしょう?
なんとガソリンです。もちろん街中にはガソリンスタンドもあるのですが、田舎の方へ行くと、商店で必ず売られているのがこの黄色いペットボトルです。

2/20(火) 【カンボジア滞在34日目】

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とうとう「オープンスタジオ」が明日に迫ってきました。こつこつと制作をする傍ら、展示作業はSSAPのスタッフ、DaraやSoklen、Sovankongに任せます。展覧会慣れしているため、あっという間に指示した場所に作品を設置してくれます。最後にライティングを決めて解散。僕はここから徹夜作業が残っています。

2/21(水) 【カンボジア滞在35日目】

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さぁ、始まりました。カンボジアで一日限定の展示会です。日本から持ってきた「水引」を使用した作品をはじめ、計7点を見てもらいました。SSAPスタッフの協力のおかげで、一日だけなのが勿体無いくらいの空間。

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オープンスタジオのタイトルにした作品「Surfaith」。「Surface(表面)」と「faith(信仰)」を混ぜ合わせた造語です。先日遠くまで探しにいった「い草」を用いて、カラフルな平面作品にしました。「赤、青、緑、黄」と「い草の原色」の5色しか用いていないのですが、もっと色数を感じます。床にあるのはカンボジアのお寺に奉納する敷物。そもそもこの「い草」はこの敷物を作るための素材です。生活の中に「民芸」として現れる日常的な「信仰」をテーマにした作品です。

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Pokoさんの通訳を交えながら、いくつかの作品を説明しました。せっかく日本から持ってきた僧侶の衣装を着てみましたが、中は汗だくです。日本の僧侶は厚着ですね。カンボジアは、ほぼ袈裟一枚。

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カンボジアでよく見かける標語(スローガン)をモチーフにした作品「CCCC」。「正しい方を選びなさい。誰のための正しさか考えなさい。」と書かれています。クメール・ルージュがプノンペンに到着した際、はじめは英雄として歓迎されました。日本はおろか、現代社会全体に通底する「『正義』の不確かさ」を込めています。

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即席の水引カーテンを施した作品。光をあてると不思議に輝くカラフルな素材に、興味を持って見てくれています。

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スタッフが用意してくれたご馳走。以前も紹介した「ちまき」と、もち米を使ったカラフルなスイーツ。

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イベントの後には必ず、このバックヤードでワイワイと飲みはじめます。急遽決まった「オープンスタジオ」でしたが、たくさんの人たちが集まってくれました。この後、これもいつものごとく二次会の飲み屋に流れます。そこからは三々五々。とりあえずカンボジア滞在のピークは過ぎました。徹夜明けなのでゆっくり寝ます。

2/22(木) 【カンボジア滞在36日目】

昨日の「オープンスタジオ」を早速片付けて、作品の一部を移動します。

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今日から「絆フェスティバル」が開催される「CJCC(日本人材開発センター)」へ。「絆フェスティバル」は毎年開催されている日本とカンボジアの有効記念イベントです。

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カンボジア人も「桜」が好きらしく、いたる所でピンクの装飾を見かけました。会場が王立プノンペン大学の中にあるので、雰囲気は「学祭」に近い若い盛り上がりです。

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「学祭」と言えば「出店」。カンボジア料理だけでなく、日本のお祭りでよくみる「たこ焼き」「フレンチフライ(ホットドッグ)」など、両国の色々なものが売られています。そんな中、Pokoさんを通じて知り合った日本の大学生が、店を出しています。

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売っているものは「水引アクセサリー」。例えばこれは「日本国旗」の紅白と「カンボジア国旗」の赤青を結びつけています。僕自身は「水引の結び方」を教えただけで、実際に商品を考えて作ったのは学生さんたち。最初はどうやったら「水引」という繊細な文化を理解してもらえるか苦労していましたが、水引体験なども追加したりして、最終的には沢山売れたようです。

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そのお店の片隅に置かせてもらっていたのが、オープンスタジオから持ってきた作品。あんまり屋外に並べることはないのですが、アートとは直接関係のないカンボジアのイベントにも参加できることができて、とても良い機会になりました。

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ダンスコンテストやコスプレイベントなど、夜遅くまで続く若々しいエネルギー。おっさんは早めに帰って寝るとします。

2/23(金) 【カンボジア滞在37日目】

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今更ですが、プノンペンのギャラリー巡りをしました。SSAPに紹介してもらった場所は全部で8箇所くらいでしたが、現代美術も扱うようなスペースはそれでほぼ全てと言ってもよい状況です。写真のような風景の中に突然現れます。

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「New Art Gallery」。ここは完全に販売目的のギャラリー。扱っている作家はカンボジア人に限らず、カンボジア周辺で活動する様々な国籍の作家。特に平面作品をメインに揃えているようでした。

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ここは「Java Cafe & Gallery」というカフェギャラリーです。ギャラリーだけの運営ではなく、カフェの中に作品がある感じなのですが作品自体はなかなか良いものを見られました。飲み物や食事も美味しいです。このお店は街の中心にあるのですが、他にもいくつか店舗を展開しているようで、後日行ったもう一つの店舗も、良い雰囲気でした。

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ちょっとだけ中心から外れた場所にあった「Bophana Center」。ギャラリーというよりむしろアートセンターと言った感じで、大きなビルの各階にはそれぞれ事務所や展示スペースなどが設けられています。設立者が映画製作者であるためか、映像や写真をメインにしている機関のようです。一階にあった巨大な神棚。用途は不明でしたが可愛らしい存在でした。

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「X-em Gallerie」。カンボジアのアーティスト「Em Riem」が創設したギャラリー。絵画を中心とした展示作品はどれも市場価値を感じさせるものばかり。展示空間としても、しっかり作品を見せようとする意識を感じます。今回まわった中では一番ギャラリーらしい印象でした。

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ドイツが母体となっているギャラリー&メディアセンター「META HOUSE」。今日は展覧会のオープニングだったらしく、溢れんばかりの人だかりでした。作品はどちらかというと古典的な絵画でしたが、いくつも助成金や賞を取っている、いわゆるキャリアのあるベテランといった感じの外国人作家でした。

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最後に行ったのは「Sa Sa BASSAC」。名前からも分かる通り、もともとは僕が滞在する「Sa Sa Art Projects」と同じ母体だそうです。ただ、SSAPのスタッフからはちゃんと紹介されていないので、現在はそれほど密な関係じゃなさそう。

ギャラリーは2階なのですが、入り口には看板もなく非常にわかりにくいです。ただし扱っている作家は質が高く、今日のギャラリー巡りで唯一、現代美術らしいものが見られました。昨年、S-AIRの招聘で札幌に滞在していた「Maline Yim」もこのギャラリーに所属する作家です。

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帰り道でたまたま出会った「巨大なテント」。道の半分以上を塞いでいます。実はこれがカンボジア式のお葬式です。亡くなった方の家の前に突然このテントを建てて、お葬式を行うのだそうです。しかも、周囲には何の予告もないらしい。

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さすがに葬儀会場の内部を覗くことはできませんでしたが、テントの中はこんな感じ。ここで参列者が食事をとれるように、たくさんの椅子と机が並んでいます。もし滞在中に葬儀があったら参列させてもらえるように頼んでいましたが、結局タイミングが合わず。一つ心残りです。

2/24(土) 【カンボジア滞在38日目】

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さてさて、とうとうカンボジア滞在最終日です。最後に仏具用品店に連れて行ってもらい、カンボジア僧侶の衣装を購入。僧侶の衣装(僧衣)は大きく2色あり、オレンジ色とエンジ色。せっかくなので両方。あのオレンジ色の傘はここに売っていたんですね。

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知人に頼まれていた現地の世界地図も探します。その方はいろんな国の世界地図を集めているらしく、カンボジアの物があれば買ってきてほしいと頼まれていたんです。しかし、いくら探しても「クメール語」の世界地図がありません。仕方ないので、明らかに西欧製の英語式世界地図と、インドシナ半島のみのクメール語地図。

写真のものは、本屋に飾られていた日本語の世界地図。これはかなり高価な値段になっており、印刷のクオリティも非常に優れた地図でした。

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そしてSSAPの前に突然現れていたテント!もしやお葬式では?と思いましたが、家族円満や長寿を祝うための儀式があるようです。昨晩は何もなかったのに、今朝になりあっという間に建てられていたことに驚きです。SSAPの前はさほど広い道ではないので、完全にテントが道路を塞いでいます。むしろSSAPの入り口も、塞いでいます…。

そんな異質な光景を横目に、Daraたちに見送られながらトゥクトゥクで空港へ向かいます。

「お世話になりました〜!」そして「See you again!」

帰国後。

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カンボジアのお土産。カラフルな筒に「胡椒」や「香辛料」が詰められています。

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帰国後に、PokoさんとDaraから、ある写真が送られてきました。カンボジアの新聞「クメールタイムズ」にデカデカと記事が載っています。「オープンスタジオ」の際に取材を受けたのですが、こんなに大きく扱ってくれるとは。後日、新聞を送ってもらったのですが「絆フェスティバル」よりも大きい記事でした。

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僕にとって、はじめての東南アジアとなる今回のカンボジア滞在でしたが、自分の中で急速にアジア熱が高まっています。これを機にもっとアジアの歴史を知りたくなりました。僧侶としても、アーティスト活動にとっても、大きな広がりを掴んだ気がしています。

今回、カンボジア派遣の貴重な機会を与えてくれた「S-AIR」。何から何まで親身になって援助してくれた「Sa Sa Art Projects」のスタッフ。難しい日本語を適切なクメール語へ翻訳してくれた「Totoさん」。リサーチの成果は、ほぼこの人のお陰と言ってもいい「Pokoさん」。カンボジアへ滞在を容認してくれた「日本の各関係者」。そして何よりも「家族」に。この場を借りて多大な感謝の意を表したいと思います。

ありがとうございました〜!!

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